割烹むらさき

おがわさんぽをフォローしてくださっている皆さまこんにちは。おがわさんぽグルメレポーターの長倉正弥です。今回は私の担当する第6回目ということで「割烹むらさき」を紹介させて頂きたいと思います。インタビューさせて頂いたのは経営者の小川貴史(おがわたかし)さん(45歳)。私にとっては商工会青年部の先輩でもあります。


写真:割烹むらさき 外観

「むらさき」は約60年前、貴史さんの祖父が創業しました。当時、奥様(貴史さんの祖母)が芸者の置き屋さんを経営しておりました。小川町の今の状況からは想像がつきにくいのですが、当時、小川町は芸者文化が非常に栄えた町だったのです。芸者さんの主な仕事は宴会でのお酌や芸の披露ですが、空いた時間で料理屋の仲居さんをやって貰えば無駄がないと考えたのが創業のきっかけだったと言います。

後を継いだ貴史さんのお父さんは婿養子でした。お父さんの代で今の建物に建て替え、料理屋さんとしての形が確立されました。お父さんのビジョンでは「寿司」、「うなぎ」、「天ぷら」が「むらさき」の三本柱でしたが、その中で寿司が弱いと感じていました。そこで、息子の貴史さんが調理専門学校を出た後、有無を言わさず品川のお寿司屋さんに修行に出されました。

職人気質の親方の元で4年間の過酷な修行を終え、小川町に戻ってきたのは23歳の時でした。戻って1年ぐらいは東京で学んだことが小川町では通用せず、苦しみました。例を挙げると東京での寿司はつまみとして食べられるのでシャリの量が少ないのですが、小川では食事として食べられるため、シャリの量が少ないと不満が出てしまうのです。そのため、職人として学んだことを一度全てリセットするような精神的経験が必要となったと言います。


写真:小川貴史さん

そんな中、貴史さんは2つの団体から誘いを受け、入会しました。商工会青年部と消防団です。その後どちらも十数年間続け、卒業しましたが、これらの経験が商売人として、そして個人としての人格形成の上で大きな意味を持ちました。一つには地元での親密な付き合いの中で、お客さんの気持ちが理解できるようになりました。

また商工会青年部では組織運営や段取りの仕方などを学ぶことが出来ました。20代前半で入った当時、30代の先輩などは青年というよりは完全におっさんに見え、ものすごく怖かったそうです。普通に怒鳴りつけられることなども日常茶飯事でしたが、その中でおっかなびっくり学んでいったそうです。

消防では一歩間違えれば本当に死にかねない火事場の緊張感と土壇場の中でパニックにならず冷静に行動するというメンタルを身に着けることが出来ました。また消防団というのは己の時間を割いて町のため、他人のために尽くす行為です。そのような行動を長く続ける中で、小川町が自らの町であるという実感がわき、誇りと愛着が育っていったといいます。

小川町は古い和食屋さんの多い町です。創業100年を超えるお店が何軒もある中で、新興の「むらさき」を盛り立てていくために色んな努力をしました。今では多くの小川の和食屋さんがやっている低価格の「ランチメニュー」ですが、いち早く行ったのは「むらさき」でした。また、地元の豆腐屋さんとのコラボレーションである「いなりの王様」、地元の酒蔵やお肉屋さんとのコラボレーションである「酒蔵漬け」は地元商工会での繋がりを活かして作った新商品でした。


写真:小川名物「いなりの王様」

そんなこんなで経営者として実力をつけてきたことが認められ、社長として就任したのは2011年のことです。ですが、何と直後に大地震が来て計画停電となり、カレンダー一面に埋まっていた予約が全てキャンセルになりました。1週間後に初めてゴルフ帰りのお客さんがきてくれた時、涙が出るほどありがたかったと言います。それから徐々に客足が回復してきましたが、一時は倒産という文字が脳裏をよぎったそうです。つくづくお客様に支えられて成り立っているのだと実感する経験でした。


写真:地元酒蔵とのコラボ料理「酒蔵漬け」

そんな経験も手伝ってのことなのか、近頃はとみに小川町全体のことを意識するようになりました。小さな店舗は自分の一店舗のことだけを考えるのでなく、色んな店舗同士で協力しあい、町全体でお客様におもてなしをしていくという感覚が重要だと感じています。最近、小川町にいろいろな新しい飲食店が生まれてきており、それはライバルが増えるということでもありますが、お客様にとっては選択肢が増えるということでもあります。それによって外食文化が根付き、町全体に活気が生まれれば一番いいと思っています。

また最近心がけているのは情報面でのサービスです。ネットが発達した今だからこそ、ネットに載っていない地元のリアルタイムな生の情報が実は非常に喜ばれます。「むらさき」では無線を用い、常に厨房とカウンターとの間で情報をやり取りし、小川町内の見どころスポットなど、お客様の興味を持ちそうな細かい最新の情報を従業員さんたちと共有しています。それがインターネット時代だからこそ、その真逆を行く超アナログだけど喜ばれるサービスではないかと感じています。

小川和紙を使った懐紙や装飾などを用いているのも、少しでもお客様に小川町全体のことに興味を持ってもらいたいと思い、始めたことです。お客様としてはそれが一つの小川町の体験となり、話のネタにもなるだろうと思ってやっています。そんな風に小川町全体で仲間意識をもって、互いに協力しあい、紹介しあうことでもっとお客様にとっても、町にとってもいい循環が生まれてくるのではないかと、貴史さんは語りました。


写真:小川和紙の懐紙

私(長倉)が貴史さんから感じられるのは小川町に対する揺るぎない愛情です。それは小川町で生まれ育ち、お祖父さんの代から続くお店を経営し、商工会青年部や消防団で十数年に渡り町のために尽くす経験の中で育まれたものに違いありません。このような地元の人々の愛情が小川町をこれまで支え、そしてこれからも支えていく原動力になっていくのではないでしょうか。

 

貴史さんの言う通り、小川町に昔からあるお店、また新しくできたお店が互いに協力し合い、小川町を今後益々盛り上げていくことを願い、結びとさせて頂きます。

 

【お店情報】

所在地:埼玉県比企郡小川町大塚20

電話:0493-72-1417

営業時間:昼の部 AM 11:00~PM 2:00

夜の部 PM 4:00~PM 9:00

定休日:毎週水曜日および第1木曜日

アクセス:小川町駅から徒歩5分ほど

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